〔平成25年9月5日施行〕非嫡出子の法定相続分の改定
嫡出子と非嫡出子
民法上の婚姻関係にある男女間に生まれた子を『嫡出子』といい、民法上の婚姻関係にない男女間に生まれた子を『非嫡出子』といいます。
民法第900条では、相続人の法定相続分について規定していますが、従来では、この法定相続分について嫡出子と非嫡出子との間では、明確に差をつけていました。
嫡出子と非嫡出子の法定相続分
従来、民法においては、非嫡出子の法定相続分について『嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とする』と規定していました。
つまり、非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の半分しかないという事です。
よって、例えば、ある男性が自分と婚姻関係に無い女性に産ませた子があるとすると、その子の法定相続分は、その男性とその妻との間に生まれた子の半分しかないという事になるのです。
同じ人物の血を引く子同士であるにも拘らず、民法上はその法定相続分に明確な差が生じていたのです。
嫡出子規定は違憲
この『嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とする』という民法第900条の規定(以下、この規定を『嫡出に関する規定』といいます)は、『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない』と定めている日本国憲法第14条に対し違憲であるとの判断が、平成25年9月4日に最高裁判所において下されました。
嫡出に関する規定の削除
上記の最高裁判決を受けて、平成25年12月に民法第900条4号但し書き前段にある嫡出に関する規定が削除されました。
これにより、同じ人物の血を引く子同士であれば、嫡出子・非嫡出子の区別なくその法定相続分は平等になる事となりました。
適用時期
この改定後の民法第900条の規定は、平成25年9月5日以後に確定する事となる相続税額から適用されます。
既確定分の相続税額については?
今回の最高裁判決における嫡出に関する規定の違憲判断は、『確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない』という旨の判示がなされています。
従って、平成25年9月4日以前に申告又は更正等により相続税額が確定している場合には、嫡出に関する規定を適用した相続分に基づいて相続税額の計算を行っていたとしてもその相続税額の是正をする事は出来ません。
また、嫡出に関する規定を適用した相続分に基づいて相続税額を計算していたという理由だけでは、更正の請求も出来ないのです。
新たに確定すべき場合には既確定分でも是正可能
上記のとおり、今回の最高裁判決における嫡出に関する規定の違憲判断は、既に確定している相続税額には、影響を及ぼしません。
しかし、平成25年9月4日以前に確定していた相続税額であっても財産の申告漏れや財産の評価誤り等の理由による更正の請求等により、平成25年9月5日以後に新たに相続税額を確定すべき事由が生じた場合には、改定後の民法第900条に基づいてその相続税額の是正が可能となっています。
更正の請求又は修正申告の場合
平成25年9月4日以前に申告等により相続税額が確定している場合において、平成25年9月5日以後に相続人が、財産の申告漏れ、評価誤りなどの理由により、更正の請求書(更正の申出書を含みます)若しくは修正申告書を提出する場合又は相続税法第32条第1項に掲げる事由により更正の請求書若しくは修正申告書を提出するときには、改めて相続税額を確定する必要があります。
これらの新たに確定すべき相続税額の計算に当たっては、嫡出に関する規定がないものとして民法第900条第4号の規定を適用した相続分に基づいて、更正の請求又は修正申告に係る相続税額を計算します。
更正又は決定の場合
平成25年9月4日以前に申告等により相続税額が確定している場合において、平成25年9月5日以後に税務署長が、財産の申告漏れ、評価誤りなどの理由により、更正又は決定を行うときには、上記と同様に新たに確定すべき相続税額の計算に当たっては、嫡出に関する規定がないものとして民法第900条第4号の規定を適用した相続分に基づいて、更正又は決定に係る相続税額を計算します。
平成25年9月5日以後に新たに相続税額が確定する場合は?
平成25年9月5日以後に新たに相続税額が確定する場合には、当然、嫡出に関する規定がないものとして民法第900条第4号の規定を適用した相続分に基づいて、相続税額を計算する事となります。
期限内申告又は期限後申告の場合
平成25年9月5日以後に相続税の期限内申告書又は期限後申告書を提出する場合には、嫡出に関する規定がないものとして民法第900条第4号の規定を適用した相続分に基づいて、期限内申告又は期限後申告に係る相続税額を計算します。
決定の場合
相続税の申告書を提出する義務があると認められる相続人が、当該申告書を提出していなかったことが明らかとなった場合には、税務署長は、嫡出に関する規定がないものとして民法第900条第4号の規定を適用した相続分に基づいて、決定に係る相続税額を計算します。